大阪丘陵エリア

Hillside area of Osaka

大阪丘陵エリア

食の求道者巡礼。大阪の丘陵編
老舗ワイナリー、マイクロブリュワリー、大阪の伝統食材。
「天下の台所」が誇る、食のテロワールを訪ねて。

食の求道者巡礼。大阪の丘陵編
老舗ワイナリー、
マイクロブリュワリー、
大阪の伝統食材。
「天下の台所」が誇る、
食のテロワールを訪ねて。

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002 Story

「ほんものは、食えば、飲めばわかる」。
だから、多くは語らない。
むやみに流通させない。
わかる人にはわかる。
南河内のうまいもんは他には負けん、と。

If you eat and drink it, you will know for sure what the real thing is.
That is why we do not talk much about it and do not distribute it unnecessarily.
People who know that the tasty food of Minami-Kawachi is as good as any other tasty food.

南河内の歴史を築き、
この地の土に、風に、水に、
うまいもんを育んでもらったから、
それを尊びたい。

The history of Minami-Kawachi has been built, and the soil, wind,
and water of this region have nurtured delicious food, so we humans want to respect that.

土地と人、分かちがたく手を結び、
数百年の激動の時代さえも生き抜いてきた
ほんものの美味しさが
大阪には、いくつもある。

The land and its people, working hand in hand, have been working together for hundreds of years. and have survived through hundreds of years of upheaval. Osaka has many such delicacies.

Go around the spot

食の求道者巡礼。大阪の丘陵編

Food Seeker Pilgrimage.
The Hills of Osaka.

創業明治の、
大阪が誇る老舗河内鴨専門店。
尊んで美味しく味わい尽くす、
命への責任

河内鴨ツムラ本店

Kawachigamo Tsumura Honten

「365日休みなんてあらへん!こっちは命、預かっているんやから!」と豪快に、けれども決して簡単ではないことをさらりと言ってのける河内鴨ツムラ本店5代目の津村佳彦さん。小ネタとユーモアもピカイチだが、明治から続く河内鴨の老舗として、その品質と味には妥協を一切許さない。「全部が全部、自分の目が届かな胸張って『安心です』って言えんやろ!」と、ひよこから成鳥になるまでの生育から加工まで全てを自社で行います。
その徹底した目配りは与えるエサにも。一口食して、まるでオートミールのような味に驚きを隠せません。「人間も鴨も食べたもので出来とるんやから!」。だからエサの配合は大麦や醤油の搾りカスなど人間が口にするものと同じものを使用する。河内鴨の美味しさの秘密のひとつです。

そうして養われるカモたちを美味しく食べてほしい、との強い想いから特にこだわりのあるロース肉は大阪近辺でしか販売を行いません。それはたたきで食べられるほど鮮度の高い肉本来の味わいを、ちゃんと届けるため。
豊臣秀吉の時代からなにわの食道楽たちに愛されてきた関西の伝統食材。たいへんな手間も苦労もありますが、それでも大事にその価値を伝え継ごうと奮闘する津村一家の手によって、今も昔も、国内外の風流人を唸らせています。

河内鴨ツムラ本店

所在地
大阪府松原市別所8丁目10-24

電話番号
072-334-1111

定休日
日曜日、特別休暇(夏季、年末年始)

https://www.kawachigamo.com/

農に触れ、頬張り、体感する。
四季折々の「天下の台所」を支える
食材作りを学ぶ

いずみふれあい農の里 /
いずみ山愛の里

Izumi Nou no sato / Izumi Yamaai no sato

阪湾と南河内を一望できる高台に位置する「いずみふれあい農の里」では、土に触れ、農の収穫体験を(ヤギの一家も揃ってお出迎えしてくれるので、動物好きやお子さんがきっと喜ぶはず!)。
夏にはブルーベリーやとうもろこし、秋には黒豆や薩摩芋、蜜柑、冬には冬野菜、そして、春にはイチゴの収穫とめぐる季節の味覚を追いかけます。
珍しい「食べ比べ」のできるいちご農園では、さちのか、ほしうらら、よつぼしなど10種類の品種が生育され、イチゴと一口に言っても、味わいや形、ツヤ、断面の色みに至るまで個性があることをあらためて気付かされます。
どれも美味しいですが、中でも紅ほっぺは酸みと甘みのバランスがちょうどよく好みでした。食べ比べるとよくわかりますが、お隣に植えられたおいCベリーはまるで練乳をかけたように甘さが凝縮されており、品種ごとの違いが際立ちます。
十把一絡げに「ただ甘くて美味しい」だけではない、イチゴの世界。知識では知っていても、実食するとその違いは一目瞭然。これだけの品種が食べ比べられるからこその味覚の学びがあります。
近場の道の駅「いずみ山愛の里」では、旬の果物をはじめ泉州の新鮮な野菜や魚介、豆腐、惣菜などが豊かに並び、「天下の台所」を支えるみずみずしい食材にたくさん出会うことができます。

いずみふれあい農の里

所在地
〒594-1136 大阪府和泉市仏並町2043

電話番号
0725-92-3310

定休日
月曜日

https://www.nounosato.com/

いずみ山愛の里

所在地
〒594-1136 大阪府和泉市仏並町398-1

電話番号
0725-92-3888

定休日
なし

https://www.yamaainosato.com/

羽曳野の地で80年。土地の名を冠し、
「朝から晩まで飲める」ワインを
生み出すテロワール

河内ワイン

Kawachi Wine

子の嶺を有する二上山のふもとに自社のブドウ畑をもつ「河内ワイン」が大事にするのは、「畑と醸造所のある羽曳野の直売所を訪れ、ワインを直に買いに来てもらうこと」。それは明治中期から始まり、かつてはブドウの生産高全国一位を誇ったこともある河内のブドウ作りの歴史、山から吹き下ろされる冷涼な風や肥沃な大地などを実際に見て回って感じる「テロワール」とともに、ワインをしっかりと味わってほしいから。そして河内ワインの考える「和飲」の価値をちゃんと届けたいから。
そうした想いから「日の出から夜明けまで飲めるワイン」をコンセプトにした、ここでしか飲めないワインを開発。ラベルに記載された太陽や星、月の満ち欠けによって「飲みどき」を伝えるエチケットと、記された時間帯にふさわしい味わいと重さのワインが展開されています。
「ワインが苦手な人も、ここでその美味しさに気づいてほしいの!」とこぼれる笑顔で見学ツアーをアテンドしてくださった北村恵さんから勧められた<金徳葡萄酒デラウエア2022>は、まるでもぎたての葡萄を頬張っているような、ジューシーなフレッシュさが口いっぱいに広がります。
まるで「スナック恵」が開店したかのように、飲み手の好みに合わせて絶妙なテンポ感で次々に振る舞われるワインにほろっと酔わされながら、思わず一言。「ここに来れば、安心してワインの魅力を知ることができますね」。
その言葉に、「私もワインは得意じゃなかったからね」と微笑む恵ママの勧めだからこそ気づける美味しさ、奥深さがあります。

河内ワイン

所在地
〒583-0841 大阪府羽曳野市駒ヶ谷1027

電話番号
072-956-0181

定休日
なし

http://www.kawachi-wine.co.jp/

誰にも負けないビールと
地元愛から生まれた、
道明寺随一のクラフトビール

MONZEN(道明寺麦酒)

MONZEN Domyo-ji beer

「ビールへの熱い想いは誰にも負けんで」と話す代表の森田剛浩さんが手がける美陵(みささぎ)ビールは、製造から販売までの全ての工程を森田さんひとりで行う超「マイクロブリュワリー」。少量生産のため、飲むならここMONZENへ。8種類のバリエーション豊かなクラフトビールをタップからいただけます。王道のIPAはもちろん、すぐ横手にある「天さん」こと道明寺天満宮の梅やカリンを使用した<てんさんエール>をはじめ地元で育まれた四季折々の恵みを活かしたクラフトビールとの出会いがあるはず。
一通りのブリュワリー見学ののち、早速、タップから注いでいただいた<美陵ハニー>を喉を鳴らしてごくりと飲み干すと、はちみつの風味がホップの苦味とほどよく口の中で合わさります。美味しい、美味しいと、グラスを傾ける様子を見て、目を細めてうれしそうな森田さん。「そうやって美味しく飲んでもらえるのが一番だよね」と恵比寿顔です。

かつて酒屋は、地域の揉め事を解決したり、未然に防いだりと「暮らしの和」を醸した機能を担いました。まちづくりや「天さん」の年中行事では、年長者と年少者を繋ぐパイプ役も務める森田さんは、まさに現代の酒屋そのもの。
飲み比べセットで風味豊かなクラフトビールに舌鼓を打ちながら、森田さんが生まれ育った旧「美陵町」への想いや歴史、天さんと地元の人々との関わり、周辺の美味しいお店の情報までのお話を聞く時間は、よい旅よい人巡りそのものになるはずです。

MONZEN(道明寺麦酒)

所在地
〒583-0012 大阪府藤井寺市道明寺1丁目16-41

電話番号
080-4395-3332

定休日
不定休

https://www.instagram.com/domyojimonzen/

南河内の食材に惚れ込んだ
シェフが手がける、
気品あふれるイタリアン

Osteria Beccafico

Osteria Beccafico

鉄南大阪線「藤井寺駅」から歩いてすぐ、昔ながらの商店街の一角に店を構える「Osteria Beccafico(オステリア・ベッカフィーコ)」は2020年にオープンしたイタリアン。奈良県に生まれ育った藤井学オーナーシェフが、南河内の食材の豊富さと生産者のこだわりに感銘を受け、立ち上げました。
「季節ごとに美味しいものを求めて現地へ足を運び、時間をかけて食材を探し出します。新たな食材との出会いと発見が楽しみです」と藤井シェフ。紹介してくださった「今日の野菜」は、土のにおいをまとうほどの新鮮さが感じられ、艶々とした彩り。
野菜や肉、卵に至るまで南河内産の食材を使用するランチコースのアンティパストとしていただいたのは「バーニャカウダ ベッカフィーコスタイル」。特製ソースにディップしたロマネスコを齧って、思わず「野菜が喜んでいます!」と感嘆してしまいました。
続くプリモピアット、セコンドピアット、ドルチェにも、藤井シェフとスタッフのみなさんの丁寧な仕事と気品が漂い、そして一皿ごとに異彩を放つ芸術性と美味しさに舌を巻くばかり。しかし彼らのこだわりはそれだけではなく、食と農を結び、サステナブルな循環型社会への配慮を怠らないことにあります。あらゆる意味で上質な食を提供するOsteria Beccaficoは昼夜を問わず満席御礼。訪問の際は、ぜひ事前予約を。

Osteria Beccafico(オステリア・ベッカフィーコ)

所在地
〒583-0024 大阪府藤井寺市藤井寺1丁目2-8

電話番号
072-938-3510

定休日
水曜日
(木曜日はランチ営業のみ)

https://www.beccafico2020.com/

町を、歴史を、未来を変えてきた、
関西最古の歴史を有する老舗ワイナリー

カタシモワイナリー

Katashimo Winery

格ある古民家が立ち並ぶ寺内町を歩き訪ねたのは、明治初期に創業し、現存する西日本最古の歴史を有する「カタシモワイナリー」。見学ツアーをアテンドする高井麻記子さんは、一家相伝の技を継ぎ、初の女性継承者として5代目としてワイナリーを支えます。彼女の軽妙な浪花節から繰り出されるワイナリーの歴史、こだわりへの熱弁、ワイナリー裏手にあるぶどう畑への案内、ぶどうとともに発展してきた地元柏原について聞けば、ワインに苦手意識のある方も初心者も、すっかりその「テロワール」に魅了されてしまうはず。
およそ2時間のツアーを通じて、海外のワイン作りではなく日本酒や醤油など古くから日本で愛されてきた「醸し」を学び、独自のワイン作りを確立させたオリジナリティーにも驚きを隠せません。
ツアー後の試飲会でいただいたワインを飲んで、「すっきりとしたクラシックな味わいを感じます。けれども面白いのは、それぞれの個性が立っているところ」との感想をお伝えすると、「うちの子はソツがない別嬪さんだけど、気量良しなのよ!」と高井さんからの的確なカウンターが。
大阪産100%のデラウェアを使い、たこ焼きとの相性を追求して生まれた「たこシャン」をはじめ、パンチのある料理にも食われない流石の大阪産ワイン。気骨あふれるその姿勢から、2021年、ついに地域ブランド「GI OSAKA」を取得するまでに。この先も、国内有数のワイン産地として大阪を盛り上げる気骨にあふれるワイナリーです。

カタシモワイナリー

所在地
大阪府柏原市太平寺2丁目9-14

電話番号
072-971-6334

定休日
ワイナリー見学日は月に1~3回程度。
HPにて公開。

https://www.kashiwara-wine.com/index.html

由緒ある地内町の一角にたたずむ
威風堂々の姿。
300年以上の歴史を有する日本家屋で
情緒を感じる

ヘリテージ大阪

Heritage Osaka

田林ならではの古くから残る街並みの一角に構える「ヘリテージ大阪」は4LDKの広大な敷地を有する古民家。300年以上前に建造された歴史ある日本家屋ながら、内部はフルリノベーションされており、旅で疲れた体をゆったりと休めることができます。
また見る人が見ればその価値に口をぽっかりと開いてしまう絵画や装飾品、家具や建具などがそこここに点在していることから、建築や日本史、美術好きの方にとってはたまらない時間を過ごすことができるはず。
近代的な最新設備のキッチンや水回りを備えることから、外部の料理人を招いて料理会もよく開催されるのだとか。これまでに取材した生産者のみなさんの食材を使った料理会もこちらで開催。どんなひとときとなるのでしょうか。

ヘリテージ大阪

所在地
〒584-0024 大阪府富田林市若松町2丁目5−21

電話番号
06-4394-7222

定休日
なし

https://bijousuites.airhost.co/ja/houses/212111

Another Story

旅のフィナーレは、ヘリテージ大阪を舞台に、生産者のみなさまをお招きした料理会で締めくくります。
本日のテーマはカジュアルビストロ。今回巡り合った南河内の美味しい食材を使用し、「食と農」「循環」などをテーマに活動し、食養生を研究する塚本さんならではの発見とストーリーのもと一皿一皿ていねいに仕上げていただきました。
メニューは、「河内鴨ロースのグリル 赤ワインと柑橘のソース」、「春菊のサラダ 金山寺味噌ドレッシング」、「河内鴨のもも肉のコンフィ」、「道明寺粉の海老シュウマイ」、「海老のあられ揚げ」、「道明寺粉を使った和風チーズケーキ」の6点。カタシモワイナリーの白ワインや熟成梅酒、美陵ビールなどとのペアリングも楽しみます。
「大阪といえば、エンタメや都市としてのイメージが強かったのですが、この旅を通じて、食の生産地であるとの認識を新たにしました。みなさんそれぞれにこだわりや想い、人情、そしてなにより地元への愛が深いことから、自分たちがほんもののものづくりをしているのに、敢えてマーケティング的な文脈にのせないことも驚きのひとつです。『文句を言う前に飲んでみろ』というような、言葉では語らない、世間や時代に左右されない強さがある。時代に合わせず本物を追求する精神がここ、大阪の作り手にあると感じました」
旅の締めくくりに、そう語った塚本さん。食い道楽たちが集まるこの土地で、彼ら彼女たちが知っているこだわりの食材がある。「なにわのテロワール」とも語られる、この地の食材は、大切に、こだわって作られるからこそ地元で大事に食い継がれている。そうした「食の宝」に気付かされる旅となりました。

The Journey continues

南河内で出会ったのは、
人情と地元愛、
断固たる食へのこだわり。

Text, Model

塚本紗代子(つかもと・さよこ)

食養生研究家・薬膳師として活動している。
<TSUMUGI>代表取締役。
コミュニティの運営や料理教室、ワークショップなどで「健康につながる食養生」を提案している。

PhotoNoci Kosho

EditYuria Koizumi

ProduceBRIGHTLOGG,INC.

  • ※撮影時のみマスクを外しています。
  • ※2023年1月現在の情報です。お出かけの際は最新の情報を各施設・店舗等にご確認ください。
  • ※写真・イラスト・地図は全てイメージです。新型コロナウイルスの感染状況や、天候・自然条件等により、記事・写真のような景色が見られない場合がございます。

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