緑の中に佇む、2階建ての白くてかわいい一軒家。もともと雑木林だった場所を開拓して作ったというガーデンカフェ「Humming Fields（ハミングフィールズ）」には、ピザに焼き菓子、ジェラートにコーヒーと、あれこれ美味しいものがぎゅっと集まっている。
旅先というだけで、あれもこれも食べたくなってしまう食いしん坊な気持ちを抑えつつ、マルゲリータとキノコのピザを注文。イタリア製の石窯で焼いたピザは耳までもっちりで、その美味しさに思わずにやけてしまう。さらに「せっかくここまで来たんだし」と魔法の言葉を添えて、ショートケーキも追加。お腹の容量も旅先での時間も、限りあるからこそ、自分で選ぶ楽しさがあるのだ。テラス席でふたり「この後はどこへ行こうか？」と作戦会議をしながら、モチモチのピザを口いっぱいに頬張った。

突如目の前に現れた、ゴツゴツした岩だらけの光景に息を呑む。あまりにも異世界感のある場所が広がっていたため、思わず「ここは本当に大阪なの？」と声が出た。ふと周りを見渡してみると、水切りをする親子や遊具で遊ぶ少年、自転車を漕ぐ青年やのんびり釣りをする老人たちの姿が目に入ってくる。

公園名にもなっている「里海」とは、海と人とが慣れ親しむ場所という意味の言葉なのだそう。同じ海辺に集まりながらも、それぞれが自分の好きなことをして、好きなように自分の時間を過ごしている。海と人、人と人との心地の良い距離感がこの海辺にはあるのかもしれない。そんなことを考えながら、私たちは自分の身一つでできる、散歩という素晴らしい遊びを楽しむのだった。

温泉に浸かりながら、ゆっくりと目を瞑る。初めて訪れる場所に、もしかすると少しだけ緊張していたのかもしれない。やわらかなお湯に包まれながら、強張っていた体がほぐれていく感覚にほっとする。
アクアイグニス関西空港は「美人の湯」と呼ばれる泉州温泉と、大阪湾を臨む絶景が楽しめる露天風呂が自慢の温浴施設だ。穏やかに波打つ青い海とその先に広がる対岸の景色を、友達とふたり肩を並べて眺める。「裸の付き合い」なんて言葉があるけれど、こんなふうに文字通り裸で温泉に入っていると、なんだかちょっとくすぐったいような、だけどもじんわり嬉しいような気持ちが湧いてくる。この子と一緒に、ここまで来れてよかったな。湯上がり後のポカポカした感覚が、いつもより長く続いていた気がする。

泉州の水茄子が食べたいと、旅が始まる前から何度も言っていた私。目の前に並ぶBBQの食材を見て「水茄子があるよ！よかったね！」と、私以上に喜んでくれる友達の姿に思わず笑ってしまう。
泉州エリア随一の夜景の穴場とされる、阪南スカイタウン展望緑地。そこに昨年オープンした、大阪府初のグランピング施設「SKY DOME阪南」が今回の私たちのお宿である。高台であるため、夕方には「日本夕陽百選」に選ばれた阪南市の夕陽を。夜には大阪市内や関西国際空港、 淡路島や神戸の煌めく夜景を楽しむことができる。

ふたりとも、グランピングは今回が初めて。慣れない手つきで火を起こし、焚き火でマシュマロを焼いてみる。「上手くできないことも、新しい挑戦の醍醐味よね」とちょっと焦げたマシュマロを食べながら思うのだった。

天下の台所と呼ばれる大阪。その大阪に豊富な海の幸を与えてきたのが、かつて「鯛以外とれないものはない」とまで言われた大阪湾だ。漁港近くのこの泉佐野漁協青空市場では、およそ30店舗が軒を並べ、水揚げされたばかりの新鮮な魚介類が所狭しと並んでいる。市場で飛び交う威勢の良い声を全身に浴びながら歩けば、自分まで元気になってくるから不思議だ。

さて、私たちも大阪湾でとれた新鮮な魚をいただこうと、市場内に併設された裕太朗寿しへ入る。「こんなに美味しい魚がこのお値段で！」という感動は、やはり市場ならではのもの。そんなふうに感動している私の横で「好きなものって、最初に食べる？最後に残す？」と尋ねてくる友達。「ちなみに私は最後に残す派なんだよね」と言い放ち、最後に残ったツヤツヤのサーモンを満足そうに食べていた。

海と山に囲まれたこの小さな町で、一際賑わいを見せているBARBARA COFFEE（バーバラコーヒー）。ここに来る人たちは皆、丁寧に淹れられたスペシャリティコーヒーと、自家製のふわふわモチモチのドーナツを楽しんでいる。
店内を見渡す。美味しいものを目の前にして、大人も子どももなんだかとても嬉しそうだ。そんなお客さんたちを見ていると、このお店が単なるカフェではなく、人と人とが顔を合わせて集まれる、新たなコミュニティになっていることに気づく。「お店に集まるヒトやコトを繋ぐのが楽しいんです」と語る店長さんの、そのニコニコ笑顔を見た時、またここに来たくなる気持ちが私にもわかった気がした。良いお店が、良い町をつくる。バーバラコーヒーから始まった繋がりが、この先どのように広がっていくのか楽しみだ。

どこまでも続く真っ白な浜辺に、雲ひとつない青い空。まるで南国のような眩しい光景を前に、自分たちがイメージする“大阪”はほんの一部分だったのだと気づかされる。ここ泉南マーブルビーチは、白い大理石を敷き詰めて作られた珍しいビーチであり、そのロマンチックな景観から、大阪で初めて「恋人の聖地」として認定された場所。大阪湾に沈む美しい夕陽は「日本夕陽百選」にも選ばれており、多くの人が訪れる人気の絶景スポットだ。
関西国際空港から飛び立つ飛行機を横目に、友達とふたり、海辺を歩く。明日、29歳の誕生日を迎える彼女の口から、ぽつりぽつりと決意に満ちた言葉が溢れる。隣にいる彼女が、この先どんなふうに年を重ねていくのか見てみたいと思った。
もうすぐお誕生日、おめでとう。